Pusuka-Novel#1

Puska-The Grand Minister #1 No カニカマ No ライフ

NO,カニカマ。NO,ライフ。

強烈な言葉だ。少なくとも私は人生で一度もこんな言葉は聞いたことがない。

それもそのはず。このプースカ侯国は世界から隔離された場所。もはや秘境とさえ言えよう。

我々の常識などこの場所ではなんの役にもたたない。貨幣、文化、歴史、国が統治される上で必要なものがこの国では一切の価値がない。

それでいて平和なのだ。ここに私は戦慄すら覚える。

この国家保安皆無の国でどうして争いが起きないのか?国民はなぜ不満を一切もたないのか?

国民の充足率、驚異の100%

信じられないことだがありえないことが現に目の前で起きているのだ。

先の手記で語ったように「死刑」という強烈なワードでさえも、国民はなんの違和感もなく受け止める。

意味合いとしてはもはや挨拶に近い。プースカ大臣には善意も悪意もない。

おそらく大臣の中では「死刑」という単語の意味さえも無価値なのだろう。

 

国民はとにかくカニカマを崇めている。あの暴君プースカ大臣が唯一愛するものだからだ。

私はこの異常な文化を維持しているプースカ侯国の国民におそるおそる聞いてみることにした。

なぜカニカマなのか?カニカマの何がそこまで駆り立てるのか?するとある国民はこう答えた。

「これは噂なんですが、とある旅人が大臣の前で世界の美食について語ったそうです。

そこで大臣は初めてカニが食べられることを知ったんです。

大臣はすぐにカニを取り寄せ、食べてみました。この時大臣は表情一つ変えなかったそうです。

そして旅人は言いました。まあ、私はカニよりもカニカマが好きなんですけどね!と。

すると今度は大臣はカニカマを用意させ食べてみました。

後にも先にも大臣が一瞬顔をほこばせたのはこの時が最後でした。

それからです。この国のシンボルがカニカマになったのは」

カニよりもカニカマが好きという旅人の一言で国中をカニカマ一色にするとは…常軌を逸している。

私は続けて聞いてみた。カニカマが国のシンボルでよいのか?と。

「え?何がダメなんですか?カニカマおいしいじゃないですか?」

こちらは味の話などしていない。政治、文化、法律、税など国家を治めるにはカニカマなど不要ではないのか?

「あなた何言ってるんです?大丈夫ですか?どこか頭でも打ちましたか?」

ギリギリのところで会話が成立しない。

そう、どの国民と話してもたいていこうなるのだ。

たとえて言うならば1+1=2は共通認識だが2×5=7になるような、そんなボタンの掛け違いのような不自然がこの国では自然なのである。

さて国民から少量の情報を手に入れた私はどうしたらプースカ大臣に面会できるのか考えてみた。

だがどんなに考えても私のような異国の旅人が一国の大臣に謁見できる方法は思い浮かばない。

私には大臣に山ほど聞きたいことがある。

私が人生をかけて紡いできた旅の手記はここプースカ侯国をもって完成するはずなのだ。

もっともっと情報を手に入れなければいけない。そしてプースカ大臣に一日も早く会わなければいけない。

私は今日もカニカマをかじりながら、焦燥感と海の旨味が混ざった心で一日を終えるのだった。