Pusuka:The Grand Minister
第0章「プースカ大臣という者」
世界の果てにあるらしい秘密の孤島。
ここにある一つの国が存在している。
「プースカ侯国」
王はいるものの飾りだけで、政権の全ては実質「プースカ大臣」が掌握している。
このプースカ大臣は一言で言うならば「優しき暴君」である。
口癖は「死刑」
いや、そもそも「死刑」以外の言葉を発する時がほとんどない。臣下の言葉にはよく耳を傾ける。
例えば、だ。
臣下「大臣!本日の予定はこのようになっておりますのでご準備ください」
大臣「…」
臣下「大臣?」
大臣「死刑」
臣下「だ、だいじ~ん!!」
概ね会話はこうして行われる。不思議なのは国民は皆このプースカ大臣を愛しているということだ。理不尽な要求にも耐える。特に不快にも感じず。まるでそよ風に耳を傾けるがごとく、優しくプースカ大臣の卑劣な言葉を受け止める。
そう、この国では「プースカ大臣」の言うことは絶対なのである。絶対的強者、暴君、理不尽の極み、それら全てを兼ね備えてる者、すなわちプースカ大臣なのだ。
こう話すと、「残虐非道の無慈悲な権力者」と思われる方もいるかもしれない。そこはプースカ大臣の名誉のためにはっきりと否定しておこう。
この国における特筆すべき点は「死刑」と言われて実際に死刑になったものはいないということだ。大臣に死刑と言われても、それは死を意味するのではない。
大臣とのコミュニケーションに成功したことを意味しているのである。
そのため「死刑」と言われて、死刑を執行するものはなく、それに対してプースカ大臣が何か言ったこともない。大臣が不満かどうかも分からない。
大臣はただそこにいるだけなのである。
そして特筆すべき点はもう一つある。
プースカ大臣は世界の何よりも「カニカマ」を愛している。いや、愛などと抽象的な表現では収まらない。
大臣にとっての「カニカマ」は理の全て、万物の根本、カニカマ以外のものは全て同義なのだ。生や死といった概念すらも、カニカマの前では何の意味を持たない。
Noカニカマ。Noライフ。
誰が言ったかは定かではないが、プースカ侯国における標語はいつしかこの言葉となっていた。
また明日もこの謎多き秘密の国を観測しようと思う。